地震後の構造点検 ②
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地震後の構造点検 ②
2018.10.07 | 住生活お役立ち講座
皆様お晩でした。
建築舎のリノベ担当です
お若い方にはわかりずらいかもしれませんが、昔
北海道の挨拶はほとんどの場合、過去形でした。
おはようございます
↓
おはようございました
という感じです。なぜ過去形なのかはいまだにわ
かりません。
関係ない話ですみません、
地震後の構造点検の2回目
地盤についてです。
何しろ地面の下は目に見えないため、安全かど
うかを確認するのは大変に難しいです。
新築を建てるときにはほぼ9割がた、地盤補強を
行わなくてはなりません。
杭を打ったり、水はけの悪い地域では、地中の
水分を逃がすための排水用暗渠工事が必要
です。
ですが、これらの工事を行ったにしても、家を建
てたとたんにその重みで住宅は沈み始めます。
完成直後の検査では、新築住宅である以上、家の傾
きは1mに対して 3㎜以下でなければならないと定め
られています。
(中古住宅の場合は1mに対して6㎜以下)
しかし、完成直後の住宅がその状況であったとして
も建築直後から沈下が始まります。
沈み方が均等であれば家が傾くことはありません
が、現実問題として、地盤の固さが均一であること
はほぼ考えられません。
したがって、住宅は徐々に傾いてゆくことになりま
す。
不均等に、または同じ割合ではなく地盤が沈んで
行くため、この現象を
「不等沈下」 または 「不同沈下」と言います。
このようにして傾きが大きくなってゆくと、
不等沈下の被害による症状
① ドアや窓の開け閉めがしずらくなる。
② 柱と壁の間に隙間が開く
③ 基礎や壁に亀裂が入る
④ 雨漏りするようになる
⑤ 給排水管が断裂したりする
⑥ 小さな地震でも倒壊する恐れがある
⑦ 住んでいる人がめまいや肩こりを覚える
といった症状が出てきて、最終的には住むことがで
きない家になってしまいます。
とは言え、こういった地盤沈下は永久に続くわけで
はなく、ほとんどの場合は3年程度で沈み切るとい
われています。
しかし今回の地震では清田区の一部地域で古い住宅
でも大きな家の傾きがおきてしまいました。
この地域は、もともと川が流れていた谷を埋め立て
て宅地化した場所らしく、地下に水が多くたまって
おり、その排水の措置が不十分だったようです。
大きな地震が起きると、地中の水分と土がシェーカ
ーにかけられたようになります。
そうすると今まで堅固だったはずの地盤が泥沼の
ようになり、住宅を支える力を失い、傾きが大きく
なったり倒壊したりすることになります。
これが液状化という恐ろしい現象です。
札幌市は石狩川が山々を削り取って堆積した土砂
で造られた「扇状地」ですので、土砂が粗粒(粗い
粒状)であるため、水はけも良く地盤も比較的良い
ため液状化の危険は少ないのですが、基本的に地
下水が多いのは確かです。
そこで一部の泥炭地や、宅地造成の際にしっかりし
た排水工事を行わなかった場合などは、このような
液状化現象が起きる恐れは十分にあります。
ところで私たち建築舎が扱う古い住宅では、1mに
対して6㎜以上、中には10㎜を超えるという、とて
も安全とはいえない傾きの住宅が多いのです。
実際、事前検査で中にはいったときにはあまりの
傾きの大きさに、船酔い状態になることもあります。
そのような住宅を、地下水の多い札幌で、安全
で安心な住宅に蘇らせるために、どんな対策を
しているか
というと、
① 事前点検(インスペクション)の徹底
古い住宅をリノベーション可能かどうかをしらべ
るために、国土交通省が定めたガイドラインに
基づくインスペクションを行っていますが、その
時に、基礎の状況と、建物の傾きをしらべます。
不等沈下の症状の①~④などの減少が見つ
かった場合は要注意です。
住宅に大きな傾きがあり、基礎に大きなクラッ
クがある場合は不等沈下の可能性が高いため
リノベーションベースとしての使用をあきらめま
す。
② 地盤データとハザードマップの調査
中古住宅の場合は新築用の更地と違って地盤
調査ができません。
したがって、近隣の地盤調査データを取り寄せ
て参考にしたり、ハザードマップの液状化の可
能性のある地域をチェックします。
インスペクションの結果と照らし合わせて、問題
がある場合はリノベーションベースとしての利用
を断念します。
③ 建物の傾き補正と基礎補強
さて、先にもお話しした通り、建築舎では、築後
35年から45年の古い住宅をリノベーションベー
スとして使用しますので、たとえ建物の傾きは
大きくても、地盤は沈み切っています。
3年どころか30年以上踏み固められた地盤です
ので、基礎に大きな割れなどがなければ、長い
実績がある分むしろ安心です。
そもそも35年以上も前には杭打ちの技術もろ
くにありませんでしたので、人々は地盤の悪い
地域には家を建てませんでした。
私たち建築舎のある東区でも、最近東雁来に
大規模な住宅地が開発されましたが、地盤が
悪かったため、長い間宅地としては利用され
ていませんでした。
そこで、建物をいったん基礎から切り離し、基
礎が水平になるようにコンクリートを打ち増し
してから炭素繊維で補強します。
(炭素繊維については前回の投稿をご覧くだ
さい)
ところで、肝心の地震後の点検ですが
レーザー水平器を使っての検査の結果
現在までのところ
最小値 0.48㎜/1000㎜
(1メートルにつき0.48㎜の傾き)
最大値 1.67㎜/1000㎜
(1メートルにつき1.67㎜の傾き)
平均値 0.86㎜/1000㎜
という結果が出ています。
札幌でも一番震度が大きかった東区と北区で、新築
の基準の 1/3以下でしたので、お客様にもご安心い
ただけましたが、私たちも一安心です。
(もちろん検査はまだ半分もおわっていませんの
で、安心するのは早いのですが・・・)
軟弱な地盤でも家を建てられるようになったのは、
杭打ちなどの地盤改良技術のおかげです。
私たちも現在新築住宅を建築中なので、開発者様に
は心から感謝しております。
(建築地は地盤が悪いわけではないのですが、地盤
改良を行う事で30年の地盤保証をおつけすることが
できます)
でも、さらにすごいと思うのは、音波を使った検査
技術もなかった何十年も前の時代に、家を建てて
も良い土地とそうでない土地を見分けた、当時の
方たちの知恵ですね。
本当に人の努力って素晴らしいです。
私たちもおよばずながら、少しでも新しい知恵を出
せるようにもっと精進しなければいけないと思い
ます。
さてさて、地盤の点でも安心なリノベーション工事
ではありますが、次に心配なのが、見えないこと
にかけては地盤にも負けない構造体(梁や柱)
です。
耐震補強工事が今や常識のリノベーションですが、
今回の地震による構造体の破損などはなかったの
でしょうか?
今回も長くなってしまいましたので、続きは次回
「非破壊検査による構造点検について」
お話しします。
さて、当社では、お客様のお好みに合わせて
選べるリノベーション住宅『R300住宅』を
中心にお家を持ちたいという方の
さまざまなご希望にお応えしています。
ご興味がありましたら、
是非ホームページもご覧ください