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地震後の構造点検 ⑭ 住みながらできる壁体内結露防止対策


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地震後の構造点検 ⑭ 住みながらできる壁体内結露防止対策

2018.12.06 |

皆様お晩でした。
(といってももうすぐ朝ですね、おはようございました)

建築舎のリノベ担当です。

前回は、壁体内結露防止の方法として

① 内壁に防湿層を設ける

② 外張断熱工事を行う

という方法をご紹介しましたが、もう家を建ててしまった、また、費用を抑えてリノベーションしたい、という方にはご負担が大きすぎるのではないか?

というお話をさせていただきました。

そこで今回は、

仮住まいや引っ越しをせずに、

住みながら壁体内結露を軽減できる方法として、

外壁の増張工法について

お話ししたいと思います。

が、その前に

まずはお詫びをさせてくださいませ。

(ちょっと長くなります)

第一に

「壁体内結露の防止」という言葉を使っていますが、

① 人が暮らしている以上水蒸気は必ず発生し、

② 温度差がある以上必ず結露も発生し、

③ 継ぎ目の全くない材料がない以上、
壁体内結露も必ず起こります。

つまり完璧な防止は今のところ不可能なのです。

お伝えしたかったことは、「早期に(すぐに)構造体の腐食に至る(柱や土台が腐ってしまう)ような多量の壁体内結露(グラスウールがべちゃべちゃに濡れてしまうような量の結露)を防ぐ」という意味でしたので、お詫びして訂正いたします。

ですが、いちいち「早期に構造体の腐食に至るような多量の壁体内結露を防ぐ」と書くとワタクシも疲れますしお読みになっている皆様も疲れると思いますので、便宜上今まで通り「壁体内結露の防止」といわせてください。(お願いしますアセアセ

第二には

外張断熱をしなかったからといって必ずしも「早期に構造体の腐食に至るような多量の壁体内結露」(ね、疲れるでしょ?)が発生するとは限らないという事です。

木材は、だいたい含水率(含んでいる水の割合)が20%を超えたあたりから腐食に向かい始め、25%くらいの状態を長期間保つと腐ってしまうらしいのです。

ですから構造木材が冷えて結露してしまっても、

① 外壁に通気層を設けて

② 室内側の防湿気密層や

③ 換気がしっかりしていれば、

壁体内結露の危険(くどいようですが「早期に構造体の腐食にいたるような多量の壁体内結露の発生をまねく危険」という意味です)は低いと思います。

① 木材には、周りが乾燥していれば湿気を吐き出し、まわりの湿度が高ければ湿気を吸収するという性質(調湿機能)がありますので、いったん濡れてしまっても周りが乾燥していさえすれば、徐々に湿気を吐き出して乾燥し、腐りません。

外壁側に通気層や透湿シートを設けるのはこのため(木材が湿気を吐き出すための隙間を確保するため)です。

② また、屋内側に防湿シートを貼るなど気密性の高い家を作るという事は、室内の暖かい空気を逃がさないようにするだけではなく、構造体内に入る水蒸気を減らすためでもあり、

③ 同様に、室内の換気をしっかりすることは、きれいな空気を取り入れるためだけではなく、窓などで起こる表面結露(目に見えるところの結露)や、内部結露(壁の中や、天井裏、床下で起こる結露)を防ぐ(減らす)ために、水蒸気を外に逃がす目的もあるのです。

最近のちゃんとした住宅はたいていこのような造りになっていると思いますので
(いつも築30年~40年以上の住宅を扱っている私にとっては、10年くらいは最近のうちです)

たとえ外張断熱を行わず、壁体内に結露が発生していても

下地の腐食が始まるまでに早くても 5~6年

構造の腐食が始まるまでに早くても 7~8年

くらいの時間は稼げるだろうというのが、

過去11年にわたって、年間20棟前後の外装リフォームを手掛けさせていただいたワタクシの経験上の感想です。

なんでこんなお詫びから始まったかというと、前回の投稿に対して、またコメントをいただいたからです。

「いつも良い情報をわかりやすく解説してくださり、ありがとうございます!

我が家は予算の関係で外張り断熱までできなかったので次回の、住みながら結露対策を楽しみにしています!

大事な宝であるお家を丁寧に大事にメンテナンスしたいです。」

(Sayakaさんごめんなさい。きっと心配されたでしょうね。
説明不足を反省しています。
こんなワタクシどもに、いつもいいね。や、暖かいお言葉をありがとうございます)

というわけで本題に戻って、外壁の増張工法のお話です。

少しでも費用をおさえながら、

少しでも壁体内結露の被害を減らすために、

私の乏しい経験からですが、わりと効果がありそうな方法をご紹介いたします。

もちろん、防湿層や外張断熱をきちんと行ったときほどの効果はないかもしれませんが、ずいぶんと改善が見られましたので、そのご報告と思ってください。

今でこそリノベーション住宅の提供を主な仕事にしていますが、以前私たちの会社はリフォーム専門の工務店でした。

中でも力を入れていたのが屋根・外壁・窓などの外装リフォームで、というのも、お客様方からのお問合せの中で最も深刻だったのが、外装に関するご相談だったからです。

内装や水廻りについては、多少のことは我慢しても住宅の寿命に大きな影響は起きづらいのですが、外装の不具合はそのまま住宅の寿命に直結してしまうからです。

ある日、初めてのお客様から

「水漏れの点検をしてほしい」というご依頼を受けました。

お伺いしてお話を伺うと

「雨も降っていないのに、基礎が濡れている。水道管かどこかから水漏れしているのではないか?」

というご心配でした。

基礎を拝見してみると、

このように基礎が上から濡れていました。

これが水道管からの水漏れならば、濡れるのはキッチン・お風呂などの水廻りの周辺だけであるはずです。

また、水漏れしていたら水道料金が高くなっているはずですが、「それはない」という事でした。

基礎の外周全般にわたって、しかもじわじわと上から浸み込むように濡れてゆくのは壁体内結露の典型的な症状です。

(壁体内結露とその予防については前回の投稿
https://ameblo.jp/kenchikusha/page-3.html
をご覧ください)

そこで試してみて頂いたのが、外壁の増張施工です。

使用するのは前々回、外壁の劣化対策でご紹介したガルバリウムサイディングです。

ただし、ガルバリウム製の外壁材であればなんでも良いというわけではなく、

必ず断熱材で裏打ちされたものを使っていただきたいのです。

まずは、ガルバリウムサイディングの構造についておさらいしますと

こんな造りになっています。今回は写真の解説をお付けします。

(前々回は手抜きして申し訳ありませんでした)

外からの防水についてガルバリウムサイディングが優れていることは前にお話しましたが、

今回のポイントは「断熱材」です。

ガルバリウムサイディングに設置されているウレタン系の断熱材はわずか1.5㎝~1.8㎝という薄さですが、グラスウールに換算すると5㎝~6㎝分の断熱性能を持っています。

この断熱性能がなかなか侮れなくて、実際に施工して頂いたお客様達の感想では

「以前は外出する時も暖房を弱くつけたまま出かけていたが、今は暖房を消して出かけても、帰ってきたときほのかに暖かい」

とか、

「暖房の設定温度を2度下げるようになった」

他には

「厳冬期の灯油代が2,000~3,000円下がった」

などというものもありました。

(あくまでも個人の感想であり、施工対象となる住宅や立地環境、またお住まいの方の体質や感覚によって異なります。
・・・という、ダイエット食品の宣伝のようなことを言わなければなりませんタラー

そこで、この

断熱材入りガルバリウムサイディングを既存外壁の上から増張施工することによって、

多少なりとも構造材の外側で断熱し、

構造体の冷えによる壁体内結露を減らそう

というわけです。

内壁側の防湿気密層の強化にはならないため、壁体内への水蒸気の侵入は防げないかもしれませんが、少なくとも下地ボードや既存壁の裏側での結露は大幅に減らす事が出来そうです。

こんな感じです。

ダウンダウン

実際に、最初にお話ししたお宅でも、この工事を行った後は基礎が濡れることがなくなった、と伺いました。

(あくまでも個人の感想であり・・・以下略)

この増張施工によるメリットは

① 壁体内結露を軽減する

② 既存壁の解体撤去費用がかからない

③ 多少なりとも断熱性能が向上する

④ 外壁の防水性能が大幅に向上する

⑤ 以後、外壁のメンテナンスの費用と手間を大幅に節約できる

(長期にわたって塗替え、張替の必要がない)

⑥ 外から施工するので、仮住まいや引っ越しの必要がない

という事です。

この工事をする時、とくに気を付けて頂きたいことは

① 必ず通気層を設ける

通気層を作らず既存壁に直貼りすると、ガルバリウムサイディングと既存壁の間にもぐりこんだ水蒸気が結露して、かえって深刻な腐食を招くことになります。

② 屋内の換気をちゃんと行う

換気が足りないと、今まで壁体内にもぐりこんでいた水蒸気が行き場を失い、窓などの、壁より断熱性能の低いところで結露しやすくなります。

屋内の空気が2時間に1回程度入れ替わるように、お風呂やトイレの換気を入れっぱなしにするか、24時間換気がついている場合はスイッチを切らないでください。

の2点で、

要するに、壁体内も屋内も、水蒸気を逃がすための換気を行う必要があるよ

ということで、断熱ガルバリウムサイディングの工事をするときは、これさえ守ればかなりの壁体内結露防止(軽減)になります。

もちろん100万円台後半、家の大きさによっては200万円を超える工事にはなりますが、

① 何年かおきに100万円前後の防水塗装を行い、

② 15~20年をめどに外壁自体を張替え、

③ 場合によっては濡れてしまった断熱材を取替え、

④ 内壁、床、天井を全て剥がして防湿層の強化を行う

ことにくらべれば、その負担は1/3~1/5くらいだと思います。

幸いにして多量の壁体内結露がおこっていたとしてもすぐに構造木材が腐食するわけではないので、最初の塗装時期(5年~10年くらい)に思い切って、多少イニシャルコスト(初期投資)は高くてもメンテナンスコスト(修繕費)の低い断熱材付ガルバリウムサイディングの施工を検討してみてはいかがでしょう?

私達建築舎では、こういう考え方(ライフサイクルコスト)を大切にしています。

かっこをつけずに平たく言うと、「長い目で見てお得」な考え方のことです。

これは
風邪をこじらせるまで薬を飲み飲み我慢して、
場合によっては肺炎を起こして入院するようなことになってしまうより、
一時的にお金がかかっても予防注射を打った方が
結局は経済的でつらい思いもしなくて済む
のに似ています。

それはもちろん、本当は家を建てる時から外張断熱と気密処理をしっかり行い、贅沢を言えばさらにガルバリウムサイディングやタイルで外壁を作れればその方が良いに決まっています。

でも!

① そもそも家を建てた当時にその技術自体がなかったり、

② 住みたい場所に適当な土地がなく、仕方なく買った建売住宅や中古住宅がその技術を使っていなかったり

③ 住宅性能より「優先しなければならない何か」に予算を取られたり
(たとえばですが、
家族が多くて広い家が必要だった、
子供の学区がたまたま地価の高いエリアだった、
お子様がスポーツや特別な勉強に打ち込んでいていて、その応援にお金がかかっていた、
ご家族に病気や障害があり、それに対応するための設備を導入しなければならなかった

・・・など)

こういった場合は、ご家族の事情を優先せざるを得ません。

家というのは家族が幸せになるための手段だからです。

住宅購入のためにご家族がいるわけでも、ご夫婦が一生懸命働いているわけでも決してありません。

必要な時に、家計を圧迫しない予算内で購入すべきものだと思うのです。

その場合はベストではなくても、たとえ建ててしまったあとからでも、モアベターな手段を選択するしかありません。

私たちは江戸時代の大名ではありませんので、

「お家(おいえ)の存続とメンツのために立派なお城を建てなければならない」

わけではなく、

自分たちが生きている間、

子供たちと一緒にいられる間だけ、

みんなで幸せに暮らせるように

① 安心で(水漏れや漏電にによる火災の心配がなく)

② 安全で(大きな地震が来ても家族に大事がなく)

③ 快適で(冬暖かく、夏は比較的涼しく)

④ 経済的な(たまにはみんなで旅行したり、おいしいものが食べられるような)

そんな住まいを確保できればそれで良いのではないでしょうか?

(というわけで私たち建築舎では、リノベーションの施工方法を一種類には限定しておりません。
設備や仕様だけではなく、一番お金のかかる住宅性能の部分も、ご家族ごとの将来設計に合わせてお選びいただくようにしています)

この「ライフサイクルコストを意識した家づくり」については、いずれどこかでお話できればいいな、と思っています。

さて、長々と構造体の腐食防止(予防とか軽減の意味です)についてお話ししてきましたが、

「予防と言うからには、腐ってしまってからでは遅いんじゃないの?」

「どんなタイミングでメンテナンスをすればいいの?」

と、どなたも当然お考えになるわけです。

そこで次回は、

「自分で見つける腐食の前兆について」

お話しさせて頂きたいと思います。

さて、当社では、お客様のお好みに合わせて

選べるリノベーション住宅『R300住宅』を

中心にお家を持ちたいという方の

さまざまなご希望にお応えしています。

 

ご興味がありましたら、

是非ホームページもご覧ください

 

右差し https://kenchikusha.net/

 

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