コストで選ぶエネルギー 地震後の構造点検 20
Blog
コストで選ぶエネルギー 地震後の構造点検 20
2019.04.18 | 住生活お役立ち講座
皆さまお晩でした。
建築舎のリノベ担当です。
今朝、2丁で3割引きの値段につられて買った豆腐が傷んでいるのを発見してショックを受けました。
結果として1丁の豆腐に1.4倍ものお金を払ってしまったことになるのです。
こんなことなら定価で1丁だけ買えばよかった・・・
(≧ㇸ≦。)
一人暮らしというのは不経済で、せっかくお風呂を入れても入るのは一人だけだし、得用ウインナーを買っても食べきれず腐らせてしまったり・・・
長い目で見ればお得だ、と思ったことが裏目に出てしまうのはよくある事ですが、住宅に関わることとなるとダメージは豆腐やウインナーの比ではありません。
前回は、災害時にもライフラインを確保するために、どんなエネルギーを選ぶか?というお話を致しましたが、
「来るか来ないかわからない地震に備えて割高なエネルギーを選ぶのはツライ」
という事で、今回は、
「もっとも割安なエネルギーは何か?」
- 「ぜったいに都市ガスでなきゃイヤ」ですか?
- 「住宅にかかるコストは4種類」
- 「お得だと思ったことが実は損だった!ライフサイクルコストで考える」
- 「都市ガスとプロパンガスのどっちが得か?」
ということを単純な「長い目で」だけではなく、「いろいろな目で見て」考えてみたいと思います。
住宅を探しているお客様の中には
「ぜったいに都市ガスでなきゃイヤ」
という方がたまにいらっしゃるのですが、それは毎月々の光熱費を低く抑えたいというお気持ちからのことでしょう。
このような、月々継続的にかかっていく費用を抑えることを「ランニングコストを抑える」という言い方をします。
住宅にかかるコストは4種類
住宅に(住生活に)かかるコストというのは大まかに分けて
イニシャルコスト : 家を建てたり設備を買うのにかかる費用
ランニングコスト : 燃料費、光熱費、など
メンテナンスコスト : 修理・修繕費用
ファイナンシャルコスト : 住宅ローンの金利や手数料・火災保険料・税金
の四つがあります。
これらのコストを一つだけで見るのではなく、
それぞれ組み合わせて総合的に考えると、
「お得だと思ったことが実は損だった」
などということがわかったりします。
こういった考え方を私たち建築舎では
「ライフサイクルコストで考える」
と言っています。
(私たちだけではなく、広く世の中で使われていますが)
ライフサイクルコストには住宅ローンの金利も含まれますので、私たちは35年間(住宅ローンの返済期間)で計算しています。
外壁を例として考えてみますと
① イニシャルコスト
予算を50万円増額して、外壁材を窯業系サイディングからガルバリウムサイディングに変更する。
② ランニングコスト
年に2回の洗浄(春と秋に水を掛けて埃を落とす)にかかる水道代。
(窯業サイディングもガルバリウムサイディングも変わらないため差は0円)
③ メンテナンスコスト
ガルバりウムは張替は不要、塗装も見た目を気にしなければ不要。
(塗装 100万円×2回、張替 200万円×1回 計 400万円がお得)
④ ファイナンシャルコスト
窯業系サイディングとの差額、50万円にかかる住宅ローンの金利
35年全期間固定金利 1.6%の場合、15万円
となります。
これを計算すると、
① + ② + ③ + ④ = ライフサイクルコストの差
50万 + 0円 + -400万円 + 15万円 = -335万円
ですので、ガルバリウムサイディングを使った方が、トータルで見てかなりお得という事になります。
(ガルバリウムサイディングの耐久性についてはこちら)
https://ameblo.jp/kenchikusha/entry-12421464475.html
では、この考えかたを使って
都市ガスとプロパンガスのどっちが得か?
を考えてみましょう。
公平を期すために、光熱費DATAは当社の同じ断熱仕様で施工した、ほぼ同じ広さの住宅での差額で計算します。
① イニシャルコスト
A)都市ガス
ガス管の引込み工事費とエコジョーズ(ボイラー)の代金 57万円
B)個別プロパン
ガス管の接続工事費とエコジョーズの代金 15万円
A)と B)の初期投資の差額は 42万円
② ランニングコスト
都市ガスとプロパンの年間消費代金の差額
約 -8千円 × 35年 = -28万円
③ メンテナンス費用
15年~20年でボイラー交換(新築時と同じ金額と考えて)
A)30万円
B)15万円
都市ガスとプロパンの差額 15万円
④ ファイナンシャルコスト
イニシャルコストの差額にかかる住宅ローンの金利
35年全期間固定金利 1.6%の場合、12万円
① + ② + ③ + ④ = ライフサイクルコストの差
42万 + -28万円 + 15万円 + 12万円 = 41万円
というわけで都市ガスの方が41万円ほど出費が多くなり、
実はプロパンガスの方がお得
だという結果が出ます。
もちろん必ずプロパンの方が安いというわけではありません。
いくつか条件があります。
- ガス会社さんが、エコジョーズを格安で金額で提供してくれる
- ガス料金の価格設定が良心的
他のガス会社を選んだ場合にはやっぱり都市ガスの方が安い、というケースもあると思います。
実際私たちも今のガス会社さんと出会う前は灯油やスマート電化をおすすめしたこともありました。
このような条件がそろった時は、
ライフサイクルコストを計算してみると、
北海道での住宅用の暖房給湯エネルギーはプロパンガスが一番お得
です。
そこで私たちはライフサイクルコストと災害時の対策を考えて、都市ガスが通っている地域であっても、あえて個別プロパンをお勧めするようにしています。
いちいち細かい計算結果は申し上げませんが、
C)灯油の場合は、
暖房と給湯に、別々のボイラーが必要であること。
OPECとアメリカの原油安売り競争がアメリカの勝利におわり、価格があがっていること。
D)オール電化の場合は
ソーラーパネルのほかに、給湯用のエコキュート、暖房用のヒートポンプボイラーの2台が必要でそれぞれが高価であること。
北海道の場合は冬の発電効率が悪く、また売電価格が下がっていること。
などをそれぞれ考え合わせると、やはりプロパンガスに軍配が上がります。
水素燃料電池や、家庭用の大容量蓄電池などが実用化されれば話は変わってくるのでしょうが、それまでにはまだ20~30年はかかると言われています。
先に申し上げた通り、どんなガス会社さんを選ぶかで、また、ハウスメーカーさんの工法や断熱、気密性能の違いによっても変わってくるでしょうから一概には言えませんが、これから新築やリノベーションで住宅を建てる際にエネルギーを選ぶときには、世間で一般的に言われている
「都市ガスは安い!」
「プロパンは高い!」
といった思い込みをいったんすてて、ライフサイクルコストを慎重に検討なさってみてはいかがでしょうか?
(もちろん災害時への備えも考え合わせてです)
ところで何回か前の投稿で
「築年数が古くなり、傷んで危険性のある家のメンテナンスにお金や手間をかけるより、売って新しい生活に役立てるのも一つの考え方ではないか?」
というお話をしましたが、以前ご相談を受けたお客様で、
「もうこれ以上住めないのはわかっている。
だけど家を売ったら、どこに住めばよいのかわからない」
とおっしゃっていた奥様のことを思い出しました。
そこで次回は
「家を売ったあとどこに住むか?」
について、考えてみたいと思います。