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初期費用無料の太陽光発電 地震後の構造点検 ㉓


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初期費用無料の太陽光発電 地震後の構造点検 ㉓

2019.05.08 |

皆さま、お晩でした。

建築舎のリノベ担当です。

子供のころ、親に連れられてデパートやスーパーに行くと、必ず「試食コーナー」という胸躍る一画がありまして、とても美味しそうな匂いがしています。

美人でにこやかなおばさん(お姉さんだったかもしれません)が、「坊や味見してみない?」などと声をかけてきました。

フラフラとその誘惑に負けそうになるワタクシの手を、ぐいっとつかんで引き戻すのはもちろん母です。

どんなにおいしくても、家計を預かる主婦として予定外の出費は避けなければなりません。

その日一日だけおいしいものを食べて幸せでも、お給料日前の一週間に子供たちにひもじい思いをさせるわけにはいかないのです。

夕飯の席でその話題(ワタクシが誘惑に負けそうになった話題)が出るたびに父親から、

「いいか!?タダより高いものはないんだぞ‼」

と何回も言われました。

 

 

今にして思えばそれはホットケーキだったり、魚肉ではなく本当の豚から作ったソーセージであったりと、現代では特に珍しい食材でもなかったのですが当時(今を去る事、50年くらい前の話です)は高価でしたし、もしかしたら食材ではなくホットプレート自体の販売促進だったのかもしれません。

 

「なんか新しくてお得そうなモノに弱い」のはワタクシの昔からの悪いクセなのですが、ウチの会社、建築舎の場合は社長も専務もそういったものに弱いので三人ともついフラフラと引き寄せられていってしまうのです。

 

しかもウチの会社の場合、腕をつかんで無理やり引き戻してくれるようなお父さんやお母さんはいません。

(お父さん、お母さん、子供のころは反抗してばかりでごめんなさい)

 

実はなんと!?「初期費用無料で太陽光発電がつけられる」というお話が来ていまして、

 

太陽光発電のイメージイラスト

 

もし本当なら、お客様にとってこんなにうれしいことはないのではないか?

と思い、早速説明会にいってきました。

ですが今回はワタクシちょっと慎重です。

「コストで選ぶエネルギー」の回で、

(こちらです)

https://ameblo.jp/kenchikusha/entry-12455256500.html

 

 

「太陽光発電は、ソーラーパネル、給湯・暖房機器・設置工事費・設備投資に住宅ローンを利用した場合の金利負担などを考えると、節約分や売電収入を合わせたとしても、プロパンガスの利用より高い」(あくまでも当社比)

などと偉そうに皆様に宣言してしまった以上、「やっぱりこっちの方がお得~」なんて簡単になびいてしまうわけにはいかないのです。

 

 

そこで今回は、

「うまい話には気をつけなければ」との固い決意のもと、

(ワタクシの決意がどこまで固いのか?という点については別の話にしておいて下さい)

「初期費用無料の太陽光発電」

  • タダより高いものはない?
  • 太陽光発電導入のリスクとメリット
  • それでも太陽光発電を導入するか?

について、以前もお話した「ライフサイクルコスト」の観点からできるだけ冷静に考えてみたいと思います。

(ワタクシの冷静さがどこまで信用できるのか?という点についても別の話にしておいてくださるとうれしいです)

 

タダより高いものはない?

 

太陽光発電システムは、技術の進んだ今でも150万円くらいします。

昔(15年くらい前)は300万円くらいしてました。

 

そんなものをホイホイ無料で設置していたら、どんな大企業だってつぶれてしまいます。

それが無料で設置できるとなれば、それには何か、設置してくれる側にもメリットがなければなりません。

 

たいていの場合、「太陽光発電が無料」というお話は、「売電収入で購入代金がまかなえる」という意味で、お客様はいったんは現金で支払うなりローンを組むなりして、太陽光発電システムを購入しなければなりません。

 

つまり設置者側はちゃんと代金を受け取っているので別に損はしていない、というか、ちゃんと採算は取れているのです。

600kw/h分のパネルを設置すると、普通の家庭で日中消費する電力はその発電量の3割ほどで賄えてしまうといいます。

 

 

そして、

残った7割を電力会社に買い取ってもらって、その代金をローンの支払いなり、支払い済みの代金の補填に充てると、10年くらいで元がとれる。

 

そうなると昼間の電気代がかからない分、電気代が安くなってお得である。

更に代金分を回収した後は、売電分が手元に残り、さらにお得である。

というのが太陽光発電システムのセールストークであり、よほど非常識な電気の使い方をしないかぎり実際にそのくらいでペイできているようです。

 

これならお客様も会社側も両方お得ですから納得できますね。

 

太陽光発電は政府が(一時は高額な補助金まで出して)推進している事業でして、その方針の中にも「10年間で設備投資の元がとれる」という項目がありますから、制度自体がそのように設計されているということのようですね。

 

ここで当然のように、

 

「設備費が昔の半分なら、モトがとれるどころか儲かっているんじゃないの?」

という疑問がわきますが、その分売電価格も下がっているので、相変わらず10年間で元が取れるという仕組みは変わっていないというワケです。

 

 

太陽光発電導入のリスクとメリット

10年間の売電で元がとれて、その後は売電しただけお手元に残るわけですから実は太陽光発電はそれだけ見るととてもお得なのです。

 

こんなことを言うと

 

「じゃあやりなさいよ!建築舎でもソレを!
このあいだの話と違うじゃないの!」

と、叱られそうですが、肝心なのは「それだけ見ると」というところでして、

 

他にも考えなければならないこととして、

① 暖房と給湯の設備にかかるコスト

② 発電できない夜間の電力をどうするか?

③ 屋根のメンテナンスコスト

④ 発電効率が落ちてくる25年~30年後にどうするか?

⑤ そもそもの設置費用をどうやってまかなうか?

などがあります。

 

 

まず、①暖房給湯設備のコストですが、太陽光発電をメインのエネルギー源にする場合、給湯はエコキュート、暖房はヒートポンプ電気温水器によるパネルヒーターか、熱交換型換気システムとヒートポンプエアコンの併用になると思います。

 

前にもお話した通り、建築舎は良心的なガス会社さんと提携しているため(なんかすごく安いので、これでホントに大丈夫なのかな?と時々心配になりますが・・・)エコジョーズという暖房給湯一体型ボイラーを約15万円という破格値で提供してもらっているため、エコキュート+ヒートポンプ暖房(+熱交換換気機器)との価格差(初期費用=イニシャルコスト)が約、60万円、住宅ローンに組み込む場合は金利負担も含めて約80万円のライフサイクルコストの差がでます。
(前にもお話した通り、提携先のガス会社さんによっては、必ずしもこうなるとは限りません。あくまで建築舎の場合は、ということです)

 

 

しかもボイラーやエアコンは、15~20年で寿命が来ますから、買い替えの時期にまた60万円のコスト差が加算されることになります。
(価格が今と同じだったらとしてですが)

あわせて140万円のコスト差は、住宅のライフサイクルをローン返済期間と同じ35年で計算した場合、年間で約 4万円になります。

 

 

更に②の、太陽光では発電できない夜間の電力ですが、特に、エコキュートは夜間電力を利用してお湯をためておく「貯湯式」ですので、原発停止後に高くなった深夜電力を使うと以前ほどのコストダウンが期待できません。

 

 

③の屋根のメンテナンスコストですが、たとえ耐久性の高いガルバリウム鋼板を使っていたとしても、長く葺き替えをせずに使い続けるためには10年に一度程度のメンテナンスが必要です。

緩んできたハゼを締めなおしたり、端々のコーキングを打ち直したり、耐久性を更に高めるために塗装する場合もあります。(ハゼというのは屋根の板金を繋げて折り曲げ、水が入らないようにしている部分です)

ハゼの図解

ということは、屋根の上を覆うように設置されたソーラーパネルを一度外して付け直さなければなりません。

ソーラーパネルが乗っている屋根の画像

 

つまり塗装屋さんのほかにパネル設備屋さんと、電気屋さんにも2回ずつ来てもらわなければならず、結構な出費がかかります。

(最低でも4人くらいの技術者さんが2日働き、部材費や移動コストもかかります。多分20万円くらいが10年に一度として35年間に最低2回分=40万円くらい、年間で約1万1千円です)

 

 

④ソーラーパネルに使っているシリコン半導体が劣化してくると発電量が少なくなってきます。

そうなると売電による収入が減り、電力会社から買う電気代が増えてきますから、毎月の電気代(ランニングコスト)が上がってきます。

「じゃあ、ソーラーパネルを買い替えよう」ということになると、新たにまた150万円(もっと安くなっているかもしれませんが)がかかり、その元を取るためにまた10年かけなければならなくなります。

「そんな不経済なことはできないから灯油やガスに切り替えよう」とすると、暖房給湯設備をすべて入れ替えなければなりません。

 

 

⑤そもそも太陽光発電や暖房給湯設備の設置費用をどう工面するか?というのが、私たち建築舎にとっては一番大きな問題です。

現金をたくさん持っていて、住宅ローンを使わない場合は問題ないのですが、建築舎のお客様の95%のかたが住宅ローンを利用されます。

住宅ローンは土地や建物を担保に入れてお金を借りるという仕組みです。
(難しい言い方では「抵当権の設定」と言います)

抵当権の設定には何と!「登録免許税」という税金がかかります。
(まあ、100万円にたいして1,000円~4,000円程度ではありますが)

 

 

また、住宅ローンには保証会社にお金を払って保証をしてもらう必要がありまが、この時払う保証料は、借入額の約2%くらい、100万円にたいして2万円くらいです。

 

 

ということは、

ソーラーパネル    150万円

暖房給湯設備の差額   60万円

合計  210万円を住宅ローンに組み込む場合、約 4万5千円

 

 

その費用もローンに組み込むとすると、担保にならない登記費用や保証料に対しての保証料(ややこしいですね)は10%くらいかかり、それに金利がかかりますから、6万5千円くらいがプラスになります。

 

「何千万円の家を買う時の6万5千円」という考え方は結構危険で、こういうチリが積もって山になってしまうのです。

更に、住宅ローンには借入限度額や、年収に対するお借入の比率、年収に対する返済額の比率などに対する条件があり、その割合によっては

保証料が倍になったり、場合によっては融資自体をお断りされてしまうこともある

のです。

 

 

それでも太陽光発電を導入するか?

① イニシャルコスト(設備投資)が高い

② ランニングコスト(月々の支払)がむかしほど安くない

③ メンテナンスコスト(維持・修繕費)が高い

④ ファイナンシャルコスト(税金・金利)の負担が大きい

= ライフサイクルコストが高い

 

 

更に、場合によってはローンを組めないこともある

しかも北海道の場合は冬の積雪で発電効率が落ちるのです

ある太陽光発電のサイトによると、初期費用の元が取れたあとは、年間約 14万5千円くらいずつお得になるという試算が載っていましたが

一年の1/3が積雪でお得にならない北海道の場合、発電効率が落ちるまでの残り15年間で、

9万7千円×15年(発電保証期間)=145万円のお得

と、

1)ソーラーパネル以外の設備投資の差額、60万円×2回

2)屋根のメンテナンスの差額、20万円×2回

3)設備投資を住宅ローンに組み込む場合の金利や税金の負担の差額、26万円くらい

の合計、168万円くらい、

この差である約22万5千円がライフサイクルコストの差ということになり、実はやっぱり太陽光発電よりプロパンエコジョーズの方がお得ということになります。
(くどいようですが、建築舎の場合は、ということです)

 

 

設置から25年以降に、発電効率の落ちたソーラーパネルを買い替える場合、その差はもっと大きくなります。

ましてや、場合によっては住宅ローンが組めない可能性があるとなると・・・

以上のことを考えると私たち建築舎では太陽光発電はあきらめざるを得なかったのです。

というわけで

 

「じゃあ建築舎では太陽光発電は採用しないわけね?」

 

と、普通ならそう結論がでるところですが、建築舎ではこのたび

それでも太陽光発電の導入をきめました。

 

 

というのは、実際に説明会で話を聞き、わざわざ会社まで質問に答えにきてもらって、今までお話した5つのリスクを検討し、コストのシミュレーションもした結果、

(更に災害による停電時のリスク回避も考慮した結果)

 

「それでもやっぱりお客様のメリットの方が大きい」

とわかったからです。

 

「それ本当なの?今までの話と全然違うじゃないの!」

ごもっともです。

 

もちろんいいことばかりではありません。

 

新築はともかく、リノベーションの場合は全てのお宅に設置できるわけでもありません。

しかも建築舎の割り当ては最大でも10軒までです。

ですが、それでも、です。

 

その理由についてはしっかりお話しなければなりませんが、その前に、

そもそも本当に「タダ」で設置してくれるのか?

そんな事業が長続きするものなのか?

大きな不安と疑問が残ります。

 

 

というわけで次回は

「無料太陽光発電はどうやって成り立っているのか?」

についてお話ししたいと思います。

 

 

さて、建築舎では住宅リノベーション事業を通じて
わずかでも皆様の豊かな住生活のお役に立ちたいと

考えています。

 

建築舎の取り組みについてご興味がおありでしたら、

是非ホームページものぞいてみてください

https://kenchikusha.net/

 

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