建築舎のコラム
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親から相続した家をリノベーションで活かす ~暮らしを整えるポイント~
公開日:2023.12.27
更新日:2025.12.12
◇ 親から相続した家をリノベーションで活かす ~暮らしを整えるポイント~ ◇
━ 親から相続した家に住む。
その選択肢が浮かんだとき、実家を活かしたいと思う一方で、古さや寒さ、今の暮らし方に合わない間取りなど、さまざまな不安を抱える方も少なくありません。
そこで今回ご紹介するのが、「リノベーションで実家を活かす」という考え方です。
建て替えはどうしても費用負担が大きくなりがちですが、リノベーションなら現在の建物を活かしながら、現代の暮らしに合わせて住まいを整えられる点が魅力です。
今回の記事では、相続後に必要な手続きや住まいを見直すポイント、建て替えとの違いについてもわかりやすくまとめましたので、実家を「これからの暮らしに合う形で受け継ぎたい」と思う方の参考になれば幸いです。
目次
1. 相続した家に住むために必要な手続き
相続した家に住む場合、まずは「相続登記」という手続きを済ませる必要があります。
2024年4月から義務化された制度で、相続によって不動産の所有者が変わった際、その内容を法務局に届け出るというものです。
相続登記が行われないまま時間が経ってしまうと、相続人の数が増えて権利関係が複雑になったり、所有者が誰なのか分からなくなる“所有者不明土地”の原因にもなります。このような問題を防ぐために、相続登記の義務化が始まりました。
■ 相続登記の申請期限
相続登記は、不動産を相続したことを知った日から「3年以内」に申請する必要があり、正当な理由なく手続きを怠った場合は、10万円以下の過料が科される可能性があります。
■ 手続きは自分でできる?
申請先は管轄の法務局ですが、必要書類の収集や申請内容の確認など、慣れていないと時間とかなり手間がかかる作業でもあります。
「平日の手続きが難しい」「書類の準備に不安がある」という方は、司法書士へ依頼することでスムーズに進められますので、あらかじめ検討しておくと安心です。
以上の「相続登記」の手続きを完了することでようやく、住み替えやリノベーションといった、実家を活かすための行動をスタートさせることができます。
相続した実家を活かしたい場合は、まずはこの基本手続きを理解することから始めていきましょう。
2. 相続した家をリノベーションするには?
相続した家にそのまま住む場合、古さや断熱性能など、気になるポイントがいくつも出てきます。
特に築年数が経っている住宅は「寒さ」「動線の不便さ」「古くなった設備や内装」といった問題が多く、快適に住み継ぐためには住まいを整えるためのリノベーションが欠かせません。
こちらでは、実家を活かすために見直しておきたい主な内容をご紹介します。
■ 間取りを見直して、暮らしに合った空間へ
昔の一軒家は部屋数が多く、細かく区切られた間取りが一般的ですが、現在は家族の集まるLDKを広く取り、動きやすい動線の間取りが人気です。
壁を取り払い空間をつなげることで、ゆとりと明るさのある住まいに変えることができます。
■ 水まわりを新しく。日々の使いやすさを向上
キッチン・お風呂・洗面・トイレなどの水まわりは、築年数を重ねた家ほど老朽化が目立つ部分です。
それぞれの設備を新しくするだけで、「掃除のしやすさ」「節電・節水性能」が大きくアップ。使うたびに気分も明るくなり、そして毎日の暮らしがぐっと快適になります。
また、意外と見落としがちなのが給湯器。問題なく使えていても、実は交換時期を迎えているといったケースが多いため、リノベーションのタイミングと合わせて交換を検討すると安心です。
■ 断熱リフォームで暮らしの快適性を高める
築年数の経った住宅で特に気になるのが、断熱性能の不足です。
古い家でよく使われている1枚ガラスの窓は外気の温度を室内に伝えやすく、冬の冷え込みや結露の原因にもなります。
その場合、内窓を追加したり、複層ガラス(※)へ交換することで室内の暖かさを保ちやすくなります。
※2枚のペアガラス、3枚のトリプルガラスがあり、寒冷地ではより断熱・保温性の高いトリプルガラスを推奨しています
また、屋根や壁・床に断熱材を補強することも非常に有効的。室内の温度が外に逃げるのを減らし、冬場だけでなく1年を通して快適に過ごせるようになります。
特に、冬の寒さが厳しい北海道では、断熱と気密の性能が暮らしの快適さを大きく左右するため、暖房エネルギーを無駄にせず、室内の温度差や結露を防ぐためにも、性能改善は欠かせないポイントです。
相続した家を安心して住み継ぐために、まずは断熱・気密の見直しから検討してみてください。
3. 建て替えとリノベーション、どちらが適している?
相続した一軒家を活かす方法として、「建て替え」と「リノベーション」がよく検討されます。
実際にどちらが適しているかは、建物の状態や予算、希望する暮らし方によって変わりますが、こちらでは「費用面」と「建物の特徴」から判断の目安を整理します。
■ 建て替えの相場と特徴
建て替えの場合、ゼロから再設計できるため最新の耐震基準を満たしやすく、自由度の高い家づくりが可能ですが、費用負担は大きくなる傾向があります。
〈木造住宅/30坪の目安〉
解体費用: 約150万円(1坪あたり約5万円 )
建築費用: 約2,700万円(1坪あたり約90万円)
外構費用: 約200万円~(必要に応じて)
諸費用: 約285万円(建築費の約10%~)
以上を合計すると、30坪で約3,000万円程度が一般的な相場となります。
■ リノベーションの相場と特徴
リノベーションは、既存の建物を活かしながら間取り・断熱・設備などを刷新する方法です。
費用は工事範囲やグレードで大きく変わりますが、1,000万〜1,500万円 がひとつの目安となります。
2,000万円に近い規模になると「建て替えとどちらがよいか」迷いやすくなりますが、建て替えは解体費用や確認申請などの付帯コストが多く、同じ予算で比較すると仕上がりの仕様が最低グレードからのスタートになりがちです。
一方リノベーションなら、予算を断熱や設備など“暮らしに直結する部分”に集中させられるメリットがあります。
■ 築年数が古い場合の判断ポイント
築50年以上の住宅は、1981年に制定された「新耐震基準」を満たしていないケースが多く、耐震補強が必要になる可能性があります。
また、シロアリ被害や基礎の劣化など、見えない部分の修繕が必要になることもあるため注意が必要です。
このように建物の構造や状態によって適した工事は大きく変わるため、まずは専門家による調査を行い、現状を正確に把握することが大切です。
そのうえで、次のようなケースではリノベーションが有力な候補となります。
・現行の建築基準法に合わせて建て替えると床面積が減ってしまう
・道路条件などの関係で再建築不可の物件である
・思い出の残る建物をできるだけ活かしたい
■ 税金・住宅ローンの観点から
固定資産税は、建物の評価額が高いほど税額も高くなります。
新築した場合は評価額が最も高くなるため、リノベーションのほうが比較的税負担を抑えやすいと言えるでしょう。
また、住宅ローンは、建て替えのほうが低金利で組めるケースが多いですが、近年はリノベーション向けローン商品も増えており、大きな差が出ない場合もあります。
資金計画は「工事費だけでなく、固定資産税・維持費・暖房費などのランニングコスト」も含めて検討するのがポイントです。
4. まとめ
リノベーションか建て替えか迷ったときは、「建物の状態」「望む暮らし方」「予算」のバランスを丁寧に見極め、判断が難しい場合は、専門家の意見を聞きながら進めましょう。
そして、リノベーションをするとなった場合は、ご自身にとって無理のない形で実家を活かすプランを立てることが大切です。
建築舎は札幌市で多くのリノベーション住宅を手掛けてきた実績があり、築古住宅の改修や断熱工事などを得意とし、幅広いご相談に対応しています。
相続した家をどう活かすべきか迷っている方も、まずはお気軽にお問い合わせください!






