建築舎のコラム
column
地震から住まいを守るためのセルフチェックと専門家の視点
公開日:2024.03.06
◇ 地震から住まいを守るためのセルフチェックと専門家の視点 ◇
元旦から石川県能登地方を襲った『令和6年能登半島地震』は、わたしたち日本人に、この国が「地震大国」であることをあらためて思い出させることとなりました。
連日、地震で倒壊した家屋の映像が報道され、「わが家は大丈夫なのだろうか」と不安になった方も多いことでしょう。
今後いつどこで起こるかわからない地震に備えて、ご自宅の耐震状況を確認してみましょう。
目次
1. わが家の耐震状況をセルフ診断!建築のプロが教える7つのチェックポイント
もちろん確実な耐震診断をするのであれば、住宅会社や専門家に依頼するのが最適ですが、高額な費用がかかるケースもあります。
まずは、建築設計図や行政が提供している調査データなどを準備し、セルフチェックでご自宅の耐震状況を確認してみましょう。
①建築年月
建築基準法は1950年の制定以来、1981年と2000年に耐震基準が大きく見直され、現在の「新耐震基準」として、建物を立てる際のセーフティガイドラインとなっています。
新築の建築年月(建物の完成年月)が2000年以前の場合は、現在の耐震基準を満たしていない可能性があります。
②地盤調査の有無
2000年の建築基準法改正以降は、建物を建築する際の地盤調査が義務付けられるようになりましたが、それ以前に施工された建物は、地盤調査が行われていないケースがあります。
近隣に海・川・沼・水田がある場合など、自治体に敷地周辺の地盤調査データを問い合わせてみましょう。
③増改築の有無
増改築をしたことのある住宅の場合は、構造上必要な壁や柱を抜いたり切断している、また、増改築後の強度を保つ耐力壁の量が足りていないケースがあります。
④大きな災害の有無
生活に支障があるような被害はなかったが、「過去に大きな地震を経験したことがある」「過去に床下浸水があった」など、お住いの地域で災害があった場合は、建物内部の目には見えない場所に損傷や腐敗があることがあります。
⑤傷んだ箇所の有無
「傷んだ箇所」とは主に、外壁や基礎部分のひび割れを指します。外壁塗装や基礎コンクリートは、気温や湿度の変化による安全面とは無関係なひび割れもありますが、大きな地震によるもの、建築時の施工不良による場合は、建物を支える構造の強度に問題がある可能性があります。
⑥広すぎるリビング/多すぎる窓の有無
1階部分において、大人数が集まれるような広すぎるリビングがあったり、採光のために窓が多すぎるような壁がある場合は、建物を支える柱や筋交いがきちんと施工されていなかったり、必要な強度を十分に満たしていないケースがあります。
とくに木造住宅は要注意。設計図で、上下階の柱や壁の配置が一致しているかどうか確認しましょう。
⑦シロアリの侵入や雨漏りの有無
近年の住宅は気密性が向上しているため、しっかりと対策が施されていない場合、何らかの理由で一度入り込んだ害虫や湿気が屋根裏や床下にとどまりやすくなっています。そのため、シロアリやカビが壁や柱内部の構造材をボロボロにしてしまうのです。その状況で大きな地震が発生した場合は、建物を支える柱や壁の強度は損なわれてしまいます。
2. 築浅の家も要注意!耐震性能補強の重要性とは
先述の通り、地震大国である日本ですが、その中でも記憶に新しい、2016年に発生した『熊本地震』。熊本地震の特徴として、観測史上初めて、わずか28時間の間に震度7の地震が同一地域において、たて続けに2度発生した点です。
建築基準法改正後は、耐震性能が向上した住宅が増えたため、阪神淡路大震災や東日本大震災でも“一度の揺れ”には耐えることができ、倒壊を免れた住宅は多くありました。
しかし、熊本地震では、最新の耐震基準を追加した2000年以降に建てられた築浅の住宅でも、最初の揺れはなんとか持ち堪えたけれど、直後の2度目の揺れで倒壊したという例が多発。その後の国土交通省の現地調査で、計算上は耐震基準をクリアしていても、間取りや構造など、建物一体が本来の耐震性能を発揮できる設計になっていない住宅が多かったことがわかっています。
「広いリビングがほしい」。開放的な広い空間を保持するために、必要な柱や筋交いが削られていませんか?施主の希望間取りを反映させた注文住宅は特に、綿密に計算された耐震性能補強が必要不可欠なのです。
現在では、耐力壁や構造補強の技術開発も進み、既存住宅であっても耐震性能の補強は可能です。
ご紹介したセルフチェックであてはまる点がある場合は、耐震リノベーションの検討をおすすめしています。家族の安全を守るために、ご自宅の耐震性能は十分に考慮しておきたいものですね。
3. まとめ
本記事では、お家の耐震状況をご自身でチェックする方法についてご紹介しました。
建築年月や地盤調査データなどは把握することができても、建物の内部の腐食状況やシロアリ発生の有無などはセルフチェックには限界があります。
耐震診断や、補強設計、耐震改修工事を実施する際の補助金制度が各自治体において実施されているので、チェックしてみると良いでしょう。
建築舎では、リノベーションにおいて耐震補強にも力を入れています。安心、安全な住まい作りをお手伝いしますので、ぜひご相談くださいね。